旅行代理店で働く従業員にとって一番の問題は給与に見合わない業務量と労働時間です。

ここを改善することができれば、従業員の満足度が上がり、お客様の満足度も上がるのではと感じています。

 

2019年4月からは働き方改革関連法が施行され、その中に残業時間の罰則付き上限規制が設けられました。

厚生労働省から労働基準法違反で再三の忠告を受けるなど表面化することが多かった旅行業界ですが、もう待ったなしの状況です

 

筆者の私は旅行業界に13年在籍していた経験があり、旅行代理店での店頭販売の経験も長くあります。

旅行会社を辞めてから他の職種を経験して、改めて旅行代理店の業務量と労働時間の多さに問題を感じます。

 

こういった旅行代理店(店頭販売)が抱える労働時間問題について、経験談を踏まえながら考察し、解決策を提案したいと思います。

 

本記事の内容

・旅行代理店の労働時間が長くなる原因について考察

・労働時間を改善して従業員の満足度を上げるビジネスモデル

・従業員の満足度が上がればお客様の満足度も上がります

 

旅行代理店の労働時間が長くなる原因

私が働いていた頃は、とにかく予約者数だけにフォーカスされていたので、接客サービスはそこそこにどれだけ業務スピードを上げて、予約者数を獲得するかに必死でした。

営業時間は予約業務に専念し、残務処理は朝早く出社して処理するか残業時間にする流れでしたので、残業時間も月に80時間は超えていました。

 

店頭販売やネット販売の場合、薄利多売のビジネスモデルなので、目標ノルマも予約者数の重視となり、目標を追えば追うほど仕事量が増えてしまうのです。

旅行代理店勤務経験の方であれば、収益モデルの詳細についてはある程度理解されているかと思います。

 

私が勤めていた時から、残業時間については問題視されていましたが、具体的な施策までは講じていませんでした。

会社からはトップダウンで早く帰るようにと促されてはいました。

 

しかし、呼びかけだけでは、働く従業員にしわ寄せがくるだけです。

目標ノルマはこれまで通りで、会社が制限する勤務時間が短くなるだけだったのです。

 

こうなると、従業員のなかには、タイムカードを切ってから仕事を続けたり、公休日に出社したり、家に持ち帰って仕事を続けたりしてしまいます。

働き過ぎる従業員の労働環境改善が目的なのに、その従業員の負担は減りません。

結局、ビジネスモデルが変わらないと、根本的な問題は何も変わらないのです。

 

ビジネスモデルを『量』から『質』へ改善して労働時間を減らす

どんなビジネスも一番大事なのポイントは集客です。

 

当時、私が勤務していた旅行代理店はたくさんのお客様が集客できていたので、もう少し、接客サービスの質商品の質を高めることに意識を傾けてもよかったのかなと思います。

接客サービスや品質を高めることができれば、それに見合った値段に上げることができるでしょう。

 

この流れがうまく作れれば、ビジネスモデルを徐々に変えることができるようになります。

 

利益率の低い商品 ⇒ 利益率の高い商品

 

利益率の高い商品であれば、予約者数を減らしても従来の利益確保が可能です。

商品の『質』を上げるには費用がかかるかもしれませんが、接客サービスの『質』については費用をかけず高められます。

『量』をこなさなければ『質』は高められませんが、当時私が働いていた会社ではその『量』をこなすだけの集客環境がありました。

 

『量』を重視したビジネスモデルで従業員に与える影響

『量』を重視し過ぎるあまり、いくつかの問題点が生まれていました。

 

『量』を重視したビジネスモデルで生じる問題点

・担当同士でお客様の奪い合い

・対応に時間のかかるお客様の押し付け合い

・担当者がお客様への対応が雑になっていく

・手配ミスが生まれてくる

 

これによって、お客様からは「安かろう悪かろう」のレッテルが貼られてしまうのです。

 

今後は、予約者数をこなす『量』からサービスの『質』を高めることに変えていくことが重要なのです。

 

『質』を高めることが必要な理由

時代の流れから見ても、低単価の旅行商品は店頭予約からネット予約に流れています。

店頭予約より人件費を抑えられるので同じ旅行商品でも安価に提供ができるからです。

 

今後、店頭予約を希望するお客様はゼロにはならないとは思いますが、テクノロジーの進化と共に、若い世代を中心にITリテラシーの高い人が増えてきます。

また、低単価な商品を予約する世代の多くはお金の学生など若い世代です。

 

店頭で求められる需要はITに弱い層であったり、お金を払ってでも人に対応してもらたい高所得者層になるでしょう。

店頭販売では、こういった層への対応力が求められます。

 

逆にネットからのお問い合わせは、AIを導入したチャットボットが対応できるようになり、業界問わず多くの企業が導入し始めています。

これから更にAIの対応力が進化していくことでしょう。

 

『量』はネット販売に任せて『質』を高めていくことが必要なのではないかと考えます。

 

『質』を重視したビジネスモデルへの改善施策

私が働ていた頃は、エリア別で担当者を分けていましたが、今後は商品単価別で担当者を分けていくべきだと考えます。

 

エリア別の部署編成の例

・アジア方面担当の部署

・アメリカ方面担当の部署

etc

 

商品別の部署編成の例

・アジア方面5万円以内の商品を取り扱う部署

・アジア方面5万円を超える商品を取り扱う部署

・ハワイ方面7万円以内の商品を取り扱う部署

・ハワイ方面7万円を超える商品を取り扱う部署

etc

 

商品別というのは、単価の高い商品(利益率の高い商品)単価の低い商品(利益率の低い商品)で分けることです。

因みに、商品単価が上がれば利益単価も上がる構造となっているものとして考えます。

 

そして、単価の高い商品は接客レベルの高い人が担当するようにするのです。

そうすることで、月の目標ノルマ(予約者数)を下げることができます。

 

これにあわせて社内の給与制度の仕組みも変えます。

A部署とB部署を目標ノルマだけでなく、給与制度にも差を付けるのです。

 

部署ごとの目標設定の例

部署 取り扱う商品 月の目標ノルマ(予約者数) 給与制度
A部署 単価の低い商品 100件 低い
B部署 単価の高い商品 70件 高い

 

そして、A部署で年間目標上位数名がB部署へ異動できる仕組みにします。

Jリーグのように入れ替え制にしてもいいかもしれません。

 

人員入れ替え制の例

・A部署の上位3名がB部署へ異動

・B部署の下位3名がA部署へ異動

 

予約者数を多く獲得することから、サービスの質を上げることへ従業員の意識を改善させることができます。

 

『質』を重視したビジネスモデルで従業員に与える影響

『質』を重視したビジネスモデルに変えることで、旅行代理店で働く従業員にとって下記の問題を解消することができます。

 

『質』を重視したビジネスモデルで従業員の悩みを解消できること

・労働時間を減らしたい

・給与アップを目指したい

 

「労働時間」「給与」については働く側の従業員が抱える一番の悩みでした。

今まで、これらの悩みを解決できずに、退職という選択をしてきた人も多くいました

こういった解決策の道を作ってあげることで、会社は従業員の退職率を抑えることもできます。

 

また、評価制度の仕組みも変わることで、今まで頑張って成果を出してきた従業員にとってはモチベーションアップに繋がります。

働く従業員のモチベーションアップが会社を良い方向へ導くことでしょう。

 

ビジネスモデルを『量』から『質』へ改善してお客様に与える影響

A部署のみでお店を続けていくと、お客様側からは、最初の担当者が選べません。

良い接客を求めているお客様にとっては満足度が上がらず、予約にならなかったり、リピートしてくれないなどのデメリットが生じます。

そこでB部署を設けることで、お客様は最初からB部署を選択できるのです。

 

お客様の層も変わる

単価の低いお店と単価の高いお店では訪れるお客様の層も変わってきます。

 

単価の高いお店には、高所得者層のお客様の比率が高まります。

こういったお客様は値段より、商品の質や接客サービスの質を求めます。

言葉を選ばずに言うと、商品の質や接客サービスの質上げて満足してもらえれば、お金はいくらでも払ってくれます。

 

逆に商品の質や接客サービスの質に満足してもらえないと、どれだけ安くても予約購入に至りません。

 

従業員のサービスの質が高くなる

A部署で実績を積んできた従業員でも接客サービスの質を磨かなければ、B部署では成果が出なくなります。

従業員が新たな壁にぶつかることで、接客サービスを磨く努力や工夫をすることでしょう。

サービスの質を求められる環境により、従業員もサービスの質を磨くことを考えるようになるのです。

そして、徐々にサービスの質も高くなることで、より利益が取れるビジネスモデルへ変えることができるのです。

A部署で量をこなす ⇒ 継続した成果を出してB部署に異動 ⇒ サービスの質を高める⇒ 高所得者のお客様層が増える⇒利益率が上がる

 

従業員の満足度が高くなればお客様の満足度も高くなる

ご紹介した改善案はあくまで一例であって、必ずこうする必要はないかと思います。

大事なことは、ビジネスモデルを『量』から『質』へ改善し、お客様の満足度だけでなく、従業員の満足度も向上させていくことです。

 

ビジネスモデルを『量』から『質』へ改善していくメリット

・お客様への対応がより丁寧になる

・商品の質や接客サービスの質にこだわるお客様層を新たに獲得することができる

・従業員にとっては新たなスキルを磨く意識が生まれる

・労働時間が減り残業も減る

・給与モデルが変えられる

・従業員の働くモチベーションが上がる

・離職率の軽減が見込める

 

旅行会社に勤めていた頃は、どうしても「お客様ファースト」の考え方が強く、「従業員の満足度は二の次」に感じていました。

従業員の満足度が下がることで、お客様の満足度にも影響が出てしまいます。

 

こういった仕組みを作ることでお客様の満足度と従業員の満足度の両方が向上します。

 

そして新たなモチベーションを持って、従業員がそれぞれ新たな工夫と努力することで会社がより良い方向に進んでいくのではないかと考えます。

 

働き方改革は会社と従業員双方の工夫した取り組みが大事なのだと思います。