・「病気やケガの療養のための休業しなければならない」
・「働きたいけど病気やケガで働けない」
・「休業期間中の給与の支払いがなくて困る」
こうした方を救済するために公的医療制度で保障される傷病手当金があります。
傷病手当金は加入している健康保険組合から受け取ることができます。
今回、傷病手当金の金額や支払い期間、条件など確認していきながら、手続きの流れについて詳しく解説してまいります。
本記事をご覧いただければ、退職から傷病手当金を受け取るまでの流れが全て分かりますので、あなたの退職後の不安が軽減されるはずです。
傷病手当金とは【わかりやすく解説】
傷病手当金とは社会保険制度の1つです。
公的な保険である社会保険には大きく分けて4つあります。
・健康保険
・雇用保険
・労災保険
・厚生年金
傷病手当金とは社会保険のなかの健康保険に含まれます。
病気やケガで動けなくなった人の生活を保障する制度です。
連続した3日間を含んで4日以上仕事に就けず、その間の給与の支払いがない場合に支払われます。
病気と言っても、大きい病気ではなくても、ちょっとしたメンタル面の要因があれば受給できます。
実際に、仕事を辞める時の理由として、メンタル面にリンクして使われているケースが多いようです。
・不眠症
・上司と合わない(適応障害)
・やる気が出ない(抑うつ病)
・満員電車が憂鬱
・体が重い
etc
普段であれば、病院に行く程度でない初期症状でも、申請すれば日割りでしっかりと受給できます。
ほとんどの会社員は一度くらいは経験があるのではないでしょうか。
傷病手当金の金額はいくらもらえる?
傷病手当金は退職前12ヶ月間の給与面(額面)平均の65%がもらえます。
傷病手当金の金額計算
例. 給与が30万円
30万×65%×18ヶ月間=351万円
給与が30万円の人は最大351万円もらえる
傷病手当金はいつからもらえる?
傷病手当金は申請書提出から1ヶ月ほどで、指定した口座へ振り込まれます。
申請書提出後は健康保険組合にて審査がおこなわれ、支給または不支給についての通知書が送られてきます。
審査に時間がかかった場合などには、1ヶ月以上かかることもあります。
傷病手当金の支払い期間は?
傷病手当金の支払い期間は最大18ヶ月となります。
傷病手当金支払い期間 | 最大18ヶ月間 |
傷病手当金を受け取って、病気の治療をします。
病気が治ったら、支払いも終わります。
傷病手当金の条件
傷病手当金をもらう前提として5つの条件があります。
傷病手当金の条件
・業務外の事由による病気や怪我の療養のための休業であること
・社会保険(健康保険)に連続して1年以上加入していること(国民健康保険は不可)
・病気やケガで働けないこと
・連続した3日間を含んで4日以上仕事に就けず、その間の給与の支払いがないこと
・虚偽の申告をしてはいけない
但し、大した症状出ないと思っていても、我慢することはやめましょう。
身体や心に支障が出てからだと取り返しのつかない状態になる可能性もあるからです。
治すのには時間がかかりますが、壊すのはあっという間です。
初期の症状は軽いものが多く、自覚症状がなかったりしますので、真面目な人や我慢強い人は特に注意が必要です。
心あたり思うところがあれば、一度病院に行って見てもらいましょう。
症状の傾向
・怒りっぽい
・不安
・不眠症
・自己嫌悪になる
・気が落ち込む
・過去に失敗に囚われる
etc
こうした傾向があれば、病院でお医者さんに伝えてみましょう。
就業困難とお医者さんが認めたら、上記の給付を受け取ることができます。
症状をきちんと伝えれば、お医者さんも、なるべく受け取れるように認めてくれるものです。
傷病手当金の受け取りで退職前にやっておくこと
在籍期間中にしなければならないことがありますので、退職の1ヶ月前には動き出す必要があります。
退職前に必ずやっておくことは以下の4つです。
STEP①:退職を打診(退職届を提出)
STEP②:在職中に連続で3日以上会社を休む
STEP③:3連休初日に病院で受診してお医者さんに働けない証明をしてもらう
STEP④:退職日に欠勤する
この4つを守らなければ、もらえません。
いきなり会社を辞めずに、この4点だけは在籍中にやっておきましょう。
順番に解説します。
STEP①:退職を打診(退職届を提出)
引継ぎや上司からの説得など想定されますので余裕を持って2ヶ月前に打診しておくと良いでしょう。
STEP②:在職中に連続で3日以上会社を休む
傷病手当金の受け取り条件に「在籍中3日以上、傷病で働けなかった日がある」こととあります。
連続3日以上とは、平日や土日祝日関わらず3連休にすることです。
ゴールデンウイークなどの連休でも構いません。
有給を使っても大丈夫なので、わざわざ欠勤する必要はありません。
STEP③:3連休初日に病院で受診してお医者さんに働けない証明をしてもらう
3連休が取れたら、連休初日に病院で受診してお医者さんに働けない証明をしてもらいます。
病院は心療内科や精神科、メンタルクリニックで問題ありません。
受診は予約してから数日後だったりしますので、先に予約をしておきましょう。
病院の先生には自分の気持ちや状態を伝えます。
・会社で働くことが心身の問題で難しい
・会社を休ませてもらうための診断書を出してほしい
・診断書がないと会社が休ませてくれないと伝える
会社の現状と自分の状態をできる限り細かく伝えてください。
ここで注意点があります。
職場のストレスが原因で診断書を書いてもらうと、労災扱いとなり、傷病手当金が受け取れなくなります。
ここはお医者さんに相談するポイントですが、事情を話して原因不詳と書いてもらうのが望ましいです。
お医者さんも理解して寄り添ってくれるので、大抵のケースでは原因不詳と書いてもらえるはずです。
万が一、就労不可と認められなかった場合は、別の病院へ行ってみてください。
お医者さんも人間なので、相性やその時の相談の仕方で、判断が異なることもあります。
本当に辛いのにお医者さんが認めてくれなかった時は、病院を変えて行ってみることです。
STEP④:退職日に欠勤する
傷病手当金の受け取り条件に「退職日に出勤しない」とあります。
もし、退職日にも出社していた場合、働ける人と見なされてしまい、傷病手当金を受け取れなくなってしまうのです。
荷物の整理に出社することもできませんので、最終日の前、もしくは退職日を過ぎてからとなります。
退職日が公休の場合は休んだことになるので認められます。
傷病手当金の手続きの流れ
次に傷病手当金の手続きの流れについて解説します。
STEP①:健康保険を切り替える
STEP②:年金は免除申請ができる
STEP③:傷病手当金の申請準備
STEP④:2度目の通院と傷病手当金の申請書記入依頼
STEP⑤:会社に申請書の記入を依頼
STEP⑥:加入してる保険組合へ送付
STEP⑦:その後1ヶ月に一度は通院する
順番に解説します。
STEP①:健康保険を切り替える
保険を切り替えるには2パターンあります。
A:健康保険から国民健康保険に切り替える
B:会社で入っていた健康保険を任意継続
どちらが安いかは人によりますので、気になる方は市役所(また区役所)に電話で確認してみてください。
どちらを選択しても構いませんが、必ずどちらかに切り替えてください。
STEP②:年金は免除申請ができる
退職したら国民年金は免除申請ができます。
「国民年金の退職による免除特例」がありますので、必要であれば、市役所(また区役所)に相談してみてください。
STEP③:傷病手当金の申請準備
(1)申請書を入手します。
申請書は在職中に加入していた健康保険組合から入手します。
多くに人が協会けんぽになりますが、その他の場合は健康保険組合連合会(けんぽれん)で調べて確認することができます。
協会けんぽの場合、ネットから申請書をダウンロードできます。
(2)申請書を記入する
申請書は記入するページが3ページあります。
・自分が記入するページ
・勤務先の会社が記入するページ
・お医者さんが記入するページ
STEP④:2度目の通院と傷病手当金の申請書記入依頼
(1)退職して1週間以内に再度病院で診察を受けに行きます。
(2)お医者さんに症状を伝えます。
・眠りが浅い
・気分が落ち込む
・集中力がない
etc
(3)申請書をお医者さんに渡す
健康保険組合から入手した申請書を渡して、傷病手当金を申請したいのでお医者さんが記入するページに記入してほしい旨を伝えます。
(4)次の診察の予約をする
1ヶ月以内を目安に次の診察の予約を取ってから帰ります。
STEP⑤:会社に申請書の記入を依頼
(1)申請書を会社に送る
健康保険組合から入手した申請書を会社に送ります。
直接渡して書いてもらうことも問題ありませんが、郵送であれば会わずに済みます。
(2)傷病手当金の申請のための記入であることを伝える
傷病手当金を申請したいので事業主記入欄に記入してほしい旨を伝えます。
(3)返送用の封筒と切手を準備する
会社側に余計な手間をかけさせないように返送用の封筒と切手はこちらで準備しておきましょう。
(4)会社からの返送を受け取る
後日会社側から返送があるはずですので申請書を受け取ります。
受け取ったら、事業主記入欄に記入してもらったかどうか確認しましょう。
STEP⑥:加入してる保険組合へ送付
書類が揃ったところで在籍していた保険組合に送付します。
申請書類を送る前に3点の記入が漏れていないか再度チェックします。
・自分が記入するページ
・勤務先の会社が記入するページ
・お医者さんが記入するページ
申請して1ヶ月くらいで、結果通知が送られてきます。
支給対象となれば「支給決定通知書」
支給対象外となれば「不支給決定通知書」
必ずどちらかが送られてきます。
STEP⑦:その後1ヶ月に一度は通院する
傷病手当金がもらえうようになったら、1ヶ月に一度は通院します。
治療の意思がないと見なされないように、1ヶ月に一度、傷病手当金受給申請書を保険組合に提出します。
因みに、退職した会社に申請書を毎回書いてもらう必要はありません。
2度目以降は自分が書くところとお医者さんが書くところだけで大丈夫です。
理由は傷病手当金を申請したい期間に在職していた期間が含まれないからです。
最大で18ヶ月ではありますが、病気が治れば給付は止まります。
【まとめ】傷病手当金の受け取りは心に余裕が生まれる
傷病手当金の手続の流れについておさらいです。
●傷病手当金の手続の流れ
(1)条件を確認する
①金額
②支払い期間
③受け取りの条件
(2)退職前にやっておくことを確認する
STEP①:退職を打診(退職届を提出)
STEP②:在職中に連続で3日以上会社を休む
STEP③:3連休初日に病院で受診してお医者さんに働けない証明をしてもらう
STEP④:退職日に欠勤する
(3)傷病手当金の手続きをする
STEP①:健康保険を切り替える
STEP②:年金は免除申請ができる
STEP③:傷病手当金の申請準備
STEP④:2度目の通院と傷病手当金の申請書記入依頼
STEP⑤:会社に申請書の記入を依頼
STEP⑥:加入してる保険組合へ送付
STEP⑦:その後1ヶ月に一度は通院する
心が病んでいるときに、仕事を探さなくてはいけない状況というのは、とても過酷でしんどいものです。
傷病手当金を正しく知っておくことで、心の余裕に繋がります。
もし、知らないでブラック企業で働いていたら、辞めたくても生活費のことを考えて辞められず身体を壊してしまったら大変です。
傷病手当金の制度は自分が今まで納めてきた税金で作られた社会保険の制度です。
精神的にも身体的にもしんどい状態であれば、遠慮なく使うべきなのです。
我慢強い人、頑張り屋さんほど無理をしてしまいがちです。
体を壊してしまってからでは遅いので、躊躇する必要はありません。
働けない状態はお医者さんが判断することなので、迷ったらお医者さんに診てもらいましょう。
会社を退職する場合、失業給付金と傷病手当金を同時に手続して最大28ヶ月受けとる方法があります。
傷病手当金と失業給付金の合わせ技で受け取りたい方は、こちらをご覧ください。
関連記事:失業保険を最大28ヶ月もらう方法│傷病手当金終了後に失業保険を併給
関連記事:失業給付金【金額・支払い期間・条件】│手続きの流れについて解説
関連記事:【社会保険給付金サポート】退職後に最大28ヶ月手当を受け取る手続きをサポート